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金沢地方裁判所 昭和29年(行)4号 判決 1957年2月17日

原告 日進建設株式会社

被告 金沢国税局長

訴訟代理人 宇佐見初男 外一名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、「被告が原告の昭和二十五年六月十四日から昭和二十六年三月三十一日迄の事業年度の法人税について、昭和二十八年十一月二十八日附でなした審査決定を取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として、

一、原告は、昭和二十五年六月十四日設立された土木請負を業とする株式会社であるが、原告の同日から昭和二十六年三月三十一日迄の事業年度の法人税について、冨山税務署長が昭和二十七年十一月十日その課税価格(所得金額)を二、三五一、七〇〇円と決定したので、原告は被告に対し審査の請求をしたところ、被告から原処分の一部を取消して右課税価格を二、一〇四、五〇〇円とする旨の昭和二十八年十一月十八日附審査決定の通知をうけた。

二、しかしながら被告の右審査決定は次の理由により違法であるから取消さるべきである。

(一)  原告は本件事業年度においては昭和二十五年五月八日訴外富山地方鉄道株式会社(以下訴外会社と称する)との間に工事代金一三、五〇〇、〇〇〇円、昭和二十六年三月三十一日まで竣工する旨の約定で締結した訴外会社高岡、新湊線の軌道建設の請負工事以外には何らの事業も行つていないものである。しかして、原告は右契約と同時にその工事に着工したが訴外会社においては右軌道の敷地の一部の買収が完了していなかつたり、且つ昭和二十五年六月朝鮮の動乱突発に伴いセメント、鉄、ガソリン等の資材が騰貴したりしたため期限通りの工事の竣工が困難となつたところ、昭和二十六年一月四日運輸省が同年四月一日より本件新設軌道と並行する国鉄新湊線の旅客輸送を廃止する旨の告示をしたので、訴外会社においては同日を期して本件軌道で旅客輸送を開始しなければならないことになつた。そこで原告は、訴外会社と協議の上当初の工事請負金額を同年三月三十一日以降両者で精算の上更改することとし、同年一月二十六日から採算を無視して該工事の突貫工事を行つたものの、竣工予定の同年三月三十一日にはなお道床、橋梁等に多くの未完成の部分を残すに至つた。しかし訴外会社は一応右末完成のまま同年四月一日午後六時より右軌道を使用し始めたが、原告は工事を続行し、同年五月末頃に至つてようやく訴外会社に対し本件請負工事物件の引渡を終えた。従つて原告の訴外会社に対する該工事の請負契約上の代金請求権は該工事を本件事業年度内に引渡すことができなかつたために本件事業年度内においてはその間原告が訴外会社より内金として既に受領した一〇、六六〇、〇〇〇円を除いた分については発生しなかつたことになり、右金額以外は原告の本件事業年度の収入として計上できない筋合である。しかるに、被告は本件審査決定において原告の本件事業年度における右請負契約上の収入を一七、八一七、六六〇円として計上し、その結果同年度赤字であつた原告に二、一〇四、五〇〇円の所得があつたものと認定するに至つたのは違法である。

(二)  原告は本件請負工事において、多数の貨物自動車を使用したので之に要するガソリン二、四〇〇、〇〇〇円を闇買したものであるが、被告は本件審査決定においてこの金韻を認めず損金に算入しなかつたのは違法である。

と述べ、なお、被告主張第一項の損益計算書の数額中、収入の部(1) 工事収入一七、八一七、六六〇円、支出の部(19)当期利益金一、七五三、四三二円は否認するがその余の科目の各数額は認める。同第一項の賞与認定額中、原告が使途不明として支出した分のあることは認めるが、その数額を争うと述べた。

被告は主文同旨の判決を求め、答弁として、請求原因第一項の事実及び同第二項(一)(二)の各事実中、原告が訴外会社との間に、同会社の高岡、新湊線の軌道建設工事の請負契約を締結し、直ちに着工したこと、該工事の竣工期日が昭和二十六年三月三十一日迄となつていたこと及び同年四月一日より訴外会社が右軌道を使用し始めたことは認めるが、その余の事実は争うと述べ、本件審査決定には何ら違法の点がないとして次のとおり主張した。

一、被告が昭和二十八年十一月十八日附本件審査決定において、原告の本年事業年度における所得を二、一〇四、五〇〇円とした算出基礎を、原告の同年度の損益計算書(原告の本件事業年度の会計帳簿等が全く不備であつたため、訴外富山税務署長が調査の結果に基いて作成し、之を被告が本件審査決定の際修正したもの)で表示すること。

支出の部

科目            金額

(1)  継承仕掛工事費      二四七、二二六円〇五銭

(2)  材料費        二、六八〇、〇一五円五〇銭

(3)  人夫費        一、九〇三、〇二九円四〇銭

(4)  運搬費        一、八八九、九九九円〇〇銭

(5)  宿舎費        一、一一六、六九五円五〇銭

(6)  給料           一二七、一七五円〇〇銭

(7)  旅費            一七、九七〇円〇〇銭

(8)  経費           四九六、四一八円六〇銭

(9)  支出利息         一一七、二三五円〇〇銭

(10)  現場費        一、五一七、八五一円〇〇銭

(11)  渡辺勘定         七五六、八四七円〇〇銭

(12)  山本扱分          七一、二八〇円〇〇銭

(13)  中村領策勘定       五七〇、六三九円八八銭

(14)  中村亥平使用分       九六、五九〇円〇〇銭

(15)  中村亥平会社 経費使用分  一九、五一〇円〇〇銭

(16)  未払経費       三、六〇二、〇二四円〇〇銭

(17)  その他経費        一一九、三五四円〇〇銭

(18)  その他(誤差分)     六五一、二七七円〇七銭

(19)  当期利益金      一、七五三、四三二円〇〇銭

計         一七、八五四、五六九円〇〇銭

収入の部

科目            金額

(1)  工事収入      一七、八一七、六六〇円〇〇銭

(2)  期未在庫          三六、九〇九円〇〇銭

計         一七、八五四、五六九円〇〇銭

で、なお、右損益計算書において、原告の支出した

中村領策勘定中      二五四、四七九円〇〇銭

中村亥平使用分       九六、五九〇円〇〇銭

計            三五一、〇六九円〇〇銭

は使途不明分として同人等に対する各賞与と認定し、之を右当期利益金一、七五三、四三二円に加算し、合計二、一〇四、五〇〇円の所得があつたものと認定したのである。

二、しかして被告は本件審査決定後右損益計算書及び賞与認定額に計数上の誤謬を発見したのでそれぞれ之を訂正した。即ち、右損益計算書中、

(13) 中村領策勘定は      五五二、八四二円八八銭

(14) 中村亥平使用分は      九七、五九〇円〇〇銭

(15) 中村亥平会社 経理使用分は 三五、〇一〇円〇〇銭

(18) その他(誤差分)     六五九、二六三円〇七銭

(19) 当期利益金      一、七四六、七四三円〇〇銭

とすべきであり、又、前記各賞与認定額は

中村領策勘定中      二三六、六八二円

中村 平使用分中      九七、五九〇円

計            三三四、二七二円

と修正するのが相当である。従つて原告の本件事業年度における所得は、右当期利益金一、七四六、七四三円と、賞与認定額三三四、二七二円と合算して二、〇八一、〇一五円となり、被告は原告の本件事業年度の課税処分が右の通り誤つてなされていたので、原告の本件課税処分に対する審査請求に基いてなされた本件審査決定を変更し、昭和三十一年十一月二十八日この旨原告に通知した。

三、次に被告が原告の本件事業年度における訴外会社よりの工事収入金を一七、八一七、六六〇円であると算定した理由は次のとおりである。

即ち、請負契約上の報酬請求権は請負契約が有効に成立したときに発生するものであつて、請負工事の完成によつて発生するものではないが、ただその履行請求権の行使か目的物の引渡完了まで停止される関係上、税務行政においてはこれら請負工事請求権は請負工事の目的物の引渡完了時を含む事業年度の益金として計上する取扱いである。しかして本件軌道新設の請負工事については原告も自認する通り訴外会社は昭和二十六年四月一日よりその使用を開始し旅客の取扱をなして収益を上げているのであるから軌道施設の目的から判断してその時において訴外会社に引渡されたものと認定するのは当然である。然も本件工事の竣工期日が同年三月三十一日であつた事は原告の自認しているところであり、訴外会社においても追加補修工事を含めて同日に引渡しがあつたものと申し述べて居り、且つ経理上もその様に処理されている点に徴しても明らかであるように、本件軌道の引渡は実質的にも客観的にも同日に完了したものである。従つて原告が昭和二十六年三月三十一日に本件軌道を訴外会社に引渡したと認められる以上、原告は引渡時において契約代金の履行請求権を行使できる筈である。しかして、このような請負業を営む法人の収入金額を算定するに際し請負収入金額が確定している時には勿論、その金額を事業年度の収入金額として計上するのは当然であるけれど、収入金額の全部、又は一部か確定していないとき、或は当初の契約金額か確定していても工事中における設計変更、追加工事、叉は物価の変動、その他により請負数量又は金額に異動が生ずることもあり、かゝる場合に、工事完了前見積りを変更する等の慣習かあるので、これらの事項を充分考慮して、当該事業の現況において適正な収入金額を算定しなければならない。被告はこれらの点を考慮して調査したところ、原告は本件事業年度末の現況において既に訴外会社より請負代金のうち合計一〇、六六四、〇〇〇円を受領しており、且つ訴外会社はその同事業年度末の決算書において本件工事の未払金として七、一五三、六六〇円を計上済であるから原告は既に受領した金額の外本件事業年度内に右未支払金に対して履行請求権を行使できたこと明かである。被告は以上の事実を綜合して原告が同事業年度に計上すべき収入金を合計一七、八一七、六六〇円であると算定したものであつて、之について何ら違法の点は存在しないのである。

四、なお、原告は被告が闇買したガソリン代金を本件事業年度の損金として算入しなかつたのは違法であると主張しているか、しかし原告は本件審査の請求にあたつては闇買したガソリン代金は三二〇、〇〇〇円であると申立て、被告の要求にもかかわらず当該支出を認めるに足る資料及び証拠を提出することなく、被告においても之を認むるに足る資料及び証拠を得られなかつたので右申立を否認したものである。しかも原告は本訴において初めて闇買ガソリン代金二、四〇〇、〇〇〇円であつたと主張し、審査請求における申立に比べ甚だ隔りがあるが、この事実から考えても原告の右主張は根拠のないものといわねばならない。要するに被告が審査決定において闇ガソリン代二、四〇〇、〇〇〇円を認めなかつたのは当然であり、この点について何ら違法はない。

立証<省略>

理由

原告が土木請負を業とするものであるところ、原告の昭和二十五年六月十四日から昭和二十六年三月三十一日迄の事業年度の法人税について、富山税務署長がその所得金額を二、三五一、七〇〇円と決定したので、原告が被告に対し審査の請求をしたところ、被告から原告に対し原処分の一部を取消して所得金額を二、一〇四、五〇〇円とする旨昭和二十八年十一月十八日附審査決定の通知があつたことは当事者間に争いがなく、且つ証人熊野義信同五十嵐外治の証言及び之により真正に成立したと認められる乙第十号証の一乃至三、同第十一号証によれば、その後被告は昭和三十一年十一月二十八日右審査決定に計数上の誤謬があつたので訂正し、右所得金額二、一〇四、五〇〇円を二、〇八一、〇一五円と右審査決定を変更してその旨原告宛通知したことが認められる。されば昭和二十八年十一月二十八日所得額を二、一〇四、五〇〇円とした審査決定中右変更された部分については原告は本訴に於て更にこれが取消を求むる利益はないものと謂うべく、従つて以下においては昭和二十八年十一月十八日の決定中取消されない二、〇八一、〇一五円の所得額(以下本件審査決定之略称する)の当否について判断する。

しかして原告は被告が本件審査決定において原告の本件事業年度に訴外会社より受領した工事請負代金一七、八一七、六六〇円と計上しているのは違法である旨主張するので審究するに、原告が訴外会社との間に、同会社の高岡新湊線軌道建設土木工事の請負契約を締結し、直ちに着工したこと、該工事の竣工期日が昭和二十六年三月三十一日迄となつていたこと、同年四月一日より訴外会社が右軌道を使用して旅客輸送を開始したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証、乙第一号証の一、二同第二号証及び証人見角甚六の証言を綜合すると、原告は昭和二十五年五月八日訴外会社との間に(1) 工事請負代金二二、五〇〇、〇〇〇円、(2) 竣工期日前認定の通り、(3) 右代金は工事竣工後検査に合格した時に原告の請求により訴外会社が精算支払をなす。但し工事完成前であつても原告がその工事資材の支払等に供するため工事出来高の十分の八以内を請求できる旨の約定で前記請負契約を締結し、直ちに着工したものであること、しかるに訴外会社が同年十二月頃に至つて右建設工事の設計の一部を変更して原告が当初の契約より増額工事をすることになつたり、叉同年六月頃突発した朝鮮動乱のためセメント、鉄鋼等の工事用資材が急激に騰貴したりしたことから、原告と訴外会社が協議の上、同年十二月迄の出来高の工事代金を当初の契約の単価で昭和二十六年一月以降施工した分は将来両者で修正した単価を取決めて決済することになつたので、結局本件請負工事の代金全額が確定且つ精算されたのは昭和二十七年頃で、その総額が一九、三三七、一八八円であること、又、原告は設立早々の会社で技術的に未熟であり、且つ資材の調達に苦しんだりしたため該工事の進行が遅れ、契約した竣工期日昭和二十六年三月三十一日迄には全部の工事(増額分を含めて)を完了するに至らなかつたが、訴外会社は同日頃原告よりその出来高において引渡を受け、且つ富山県知事より本件軌道の運輸許可を得た上、同年四月一日より旅客輸送を開始したこと、その後原告は残工事を続行して同年五月頃本件請負工事全部を完成するに至つたこと、原告が前示工事代金内払請求の約定に基いて訴外会社より昭和二十五年七月七日より昭和二十六年三月一日まで前後十回に亘り合計一〇、六六〇、〇〇〇円を請負代金の内金として受領し、且つ同月三十日訴外会社に対して三、五〇〇、〇〇〇円の内払金を請求し同年四月三日之を受領し、残余の代金は同年六月四日より昭和二十七年二月二十三日迄の間前後八回に亘つて決済されたこと、訴外会社が本件工事の同年三月三十一日現在決算書において、原告に対する未支払金を、七、一五三、六六〇円と計上していることが認定できる。そして以上の認定事実を覆えすに足りる証拠がない。

そこで右のような事情において本件請負工事代金中如何なる額を原告の本件事業年度の収入(益金)に算入すべきかについて考えてみるに、法人税法上課税の対象となる所得とは各事業年度の総益金から総損金を控除した金額であり、総益金とは資本の払込以外において法人の純資産の増加となるべき一切の事実に基く収益その他の経済的利益を指し、総損金とは資本の払戻及び利益の処分以外において法人の純資産の減少となるべき一切の事実に基く費用その他の経済的利益を指すものと解すべく、且つ所得の事業年度帰属を定めるに当りその収益又は費用がどの事業年度におけるものであるか決定するについて税法上明文がないが、近代法人企業にあつては課税の明瞭、確実を期する上において講学上のいわゆる現金主義によつては到底正確な損益を把握することができないから、収入すべき債権の確定、支払うべき債務の確定をもつて基準とするいわゆる発生主義(権利確定主義)によるのが相当であると謂わねばならない。そして右発生主義によるとしてもこれを実際の所得の形態に対して適用する場合、合目的見地からその具体的事態に即応した考慮を払わねばならないこと勿論である。右の如き見地からして本件の如き工事請負契約に基く益金については原則として目的たる契約事項全部の完成(引渡を要するものについては引渡)のときの事業年度に帰属するとすべきであるが、事業年度内に契約の一部が未完成であつた場合でも、既に完成された部分についての引渡が終了していて、且つその完成部分の代金が債権として確定できる場合にはその限度において右確定した代金が同事業年度の益金に帰属すると解するのが相当である。本件においても前段認定のように昭和二十六年三月三十一日現在原告の請負つた訴外会社の軌道建設工事の一部がなお未完成であつたが、原告は既に完成した部分については訴外会社に対しその引渡を終え、同会社は同年四月一日より之を便用して旅客輸送を開始し、且つ右工事に関する同会社の昭和二十六年三月三十一日附決算書に右工事完成部分に対する原告への未支払代金として七、一五三、六六〇円を計上していて既に権利として確定していたものであるから原告が訴外会社より右未支払代金七、一五三、六六〇円を本件事業年度内に現実に受領していなかつたとしても収入金(益金)として計上するのは発生主義の原則上許されると謂わねばならない。従つて被告が原告において同年三月三日までに既に訴外会社より受領していた一〇、六六〇、〇〇〇円及び右未支払代金請求権七、一五三、六六〇円、合計一七、八一七、六六〇円を本件事業年度内における原告の工事収入金(益金)として計上したのは相当であつて何ら違法でない。

次に原告は本件請負工事において多数の貨物自動車を使用したので之に要するガソリン二、四〇〇、〇〇〇円を闇買したところ、被告が本件審査決定の際この金額を認めず損金に算入しなかつたのは違法である旨主張するが、この点について何ら証拠資料を提出しないので右主張は採用できない。

なお、原告の本件事業年年内における支出(損金)が被告主張第一項記載の損益計算書の(1) 乃至(12)、(16)(17)の各科目とその数額の通りであつたこと、収入として期末在庫三六、九〇九円相当があつたことは当事者間に争いがなく、且つ支出として被告主張第二項修正損益計算書の如く(13)中村領策勘定五五二、八四二円、(14)中村亥平使用分九七、五九〇円、(15)中村亥平会社経理使用分三五、〇一〇円、(18)その他(誤差分)六五九、二六三円があつたことは原告において明かに争わず、且つ弁論の全趣旨からしても之を争つていると認められないので之を自白したものと看做すべきである。そして原告の本件事業年度の工事収入が被告作成の右損益計算書記載の如く一七、八一七、六六〇円とすべきことは前段認定の通りであるから原告の本件事業年度における利益金が一、七五三、四三二円になること計数上(右工事収入金一七、八一七、六六〇円に期末在庫三六、九〇九円を加えたものから右支出の(1) 乃至(18)の各科目金額の合計額を差引く)明かである。更に証人熊野義信、同五十嵐外治、同岡本良策の各証言及び之により真正に成立したと認められる乙第三、第四号証、同第五号証の一、二、同第六乃至第九号証を綜合すると前記中村領策勘定五五二、八四二円中、二三六、六八二円、中村亥平使用分九七、五九〇円中全額を各同人等に対する賞与と認定すべき筋合の原告の支出であることが肯認できる(そして以上の認定事実を覆えすに足る証拠がない)。しかして右認定賞与額合計三三四、二七二円は法人税課税上損金に算人されずして所得に加算されるべきものであるから、原告の本件事業年度内の所得金額は結局前示当期利益一、七四六、七四三円に右三三四、二七二円を加えた二、〇八一、〇一五円であること明かである。

そうすると原告の本件事業年度における所得を右同様二、〇八一、〇一五円とする本件審査決定には何ら違法の点はなく、原告の本訴請求は理由がないから之を棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 観田七郎 辻三雄 柳原嘉一)

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